音楽会の招待状をよくいただく。聴きに行きたいコンサートばかりだが、会期のある展覧会と違って日時に指定がある。音楽家は大変だなぁと思う。

バイオリニストの竹澤恭子さんのフアンクラブ会報が届いた。今や日本を代表する世界的なバイオリニストだ。聴くたびに感性は研ぎ澄まされ、鋭敏でダイナミックな深みのある演奏には、若くして巨匠の風格さえ感じさせる。

恭子さんは3歳の頃から父のレッスンを受けに来ていた。5歳の頃にはすでにメンデルスゾーンのバイオリン協奏曲を弾いていた。私はレッスン室の隣の部屋で感銘を受けて聴いていたものだった。

恭子さんのご両親は大変熱心で、当時の家庭でのレッスンの様子をお母さんが週間ごとにまとめられた、貴重な記録が残されている。*(1)

多くのお弟子さんから父の思い出話を訊くことがある、みな口をそろえたように「叱られたこと」が思い出だという。とにかく厳しかったようで芸術は道徳だという考えが強かったようだ。

そのことを以前、竹澤さんに訊いたことがある。私は「叱られた憶えはない]と語っていた。


父は私たち家族が音楽を通して成長することを願っていたのだろうと思う。「山村弦楽四重奏団」と銘打って父がビオラ、兄がチェロ、姉が第一バイオリン、そして私が第二バイオリンを担当し、客が来るたびに私たちを集めてホームコンサートをした。父はそのことがとても嬉しかったようだった。

しかし私はいつの日から音楽から美術の道に傾倒し始めていったのだった。それは父への反発であったのかもしれない。けれども結局音楽から離れることなく、それよりも幼児期から思春期にかけて育まれた音楽は今の私の創作活動の根幹を形成しているものだろうと思う。

先年スイスのベルン美術館に行った折りバイオリンが名手だったパウル・クレーの作品に接した私は、個展のオープニングに、いつの日かバイオリンを弾いてみたいと願っていた。そしてその思いは2005年の個展におとずれたのだった。そのことが新聞の展評に「・・・山村は今回の個展のオープニングで初めてバイオリン演奏を披露した」・・・と快く掲載されていた。けれども私はもう二度と人前で弾くまいと心に誓ったのだった。



*(1)
書名:家庭でのレッスン記録。著者:竹澤智保子。発行:才能教育研究会。800円。


竹澤恭子さんの近々の主な国内のスケジュール
○ハンブルク北放送交響楽団 大阪公演。5月27日(日)14:00、ザ・シンホニーホール(大阪)
 メンデルスゾーン:バイオリン協奏曲 ホ短調 他。ABCチケットセンター06-6453-6000

○サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン2012。6月14日(木)19:00サントリーホール・ブルーローズ。
メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番ニ短調 、他。ピアノ:江口玲、チェロ:マリオ・ブルネオ。
サントリーホールチケットセンター0570-55-0017

○横浜共立学園「竹澤恭子バイオリン リサイタル」6月16日((土)14:00神奈川県民ホール。チャイコフスキー:バイオリン協奏曲ニ短調 他。横浜共立学園045-641-3785
  
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2012.05.15 / Top↑