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ことしも庭のサクラソウが咲きはじめた。

貧乏学生だった頃、一人の友人が小さな鉢植えのサクラソウを抱えて訪れてくれたことがあった。当時、私の住んでいたアパートは戦災を免れた古い建物で、薄暗い部屋には机と本箱だけの侘しい雰囲気だった。友人が持ってきてくれたサクラソウが窓辺に置かれると、部屋の雰囲気は一変し一気に明るく少し華やいだ感じになった。
当時、常に腹を空かせていた私には花より腹の足しになるものの方が有難いと思っていた。けれど、一鉢のサクラソウは夏ごろまで咲き薄汚れた侘しい部屋を明るく私は毎日がウキウキするような感じに,花のある生活の素晴らしさを知った。それいらい友人宅を訪れるときはいつも少しだけれど花を持って行くことが習慣になった。

先年、私が大病を患い、九死一生を得、危篤状態から脱し歩くことが許された時、サクラソウをくれた友人の声が聴きたくなり院内の公衆電話から電話をした、コール音がしばらく鳴り続いてから家族の人が電話口に出た。私は学生時代の友人だと告げると、少し間をおいて重苦しい声で、今日、友人の葬儀をすませたところだったと聞かされた。何という事だろうと、私は言葉を失った。

サクラソウは美しく清楚な花だ。この時期になるとサクラソウから私は私の内に咲かせてくれた大切なことを想う、そして多くなことを回想するのだった。
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2019.03.18 / Top↑