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わが家の食卓に珍しく「メロンと生ハム」が上った。先年にブリュッセルの日本大使館近くに住んでいたフランス文学者で美術評論の江原順さんを訪ねたことがある。その時に冷やしたメロンと生ハムが無造作にテーブルの上におかれたことを思いだす。江原さんの大好物だったようで、遠来の訪問者を迎える精一杯のもてなしのようだった。江原順さんのことはシュルレアリズムやダダ、トリスタン・ツアラーなどの著書だけの人だったが、あるきっかけから、手紙のやり取りをするようになった。
久しぶりの日本人の訪問にいろいろと語ってくれた。当時「道元」をフランス語に翻訳していた。また日本の研究者からの手紙を取り出し、私に知っているかと訊かれ差出人を見せてくれた。一人は京大の宇佐美斉氏と、もう一人は北大の大平具彦氏で共にフランス文学者だった。
宇佐美氏とは高校の同級生だったと話すと驚いていた。そういえば、宇佐美氏は高校時代から、ジャン・ジュネとかランボーなどを語っていた。京大に進学してからも、「状況」という評論集を学生仲間と出版していた。北大の大平具彦氏には帰国してから江原さんの伝言を添えて手紙を書いた。返信に近著の「トリスタン・ツアラ」の労作を謹呈された。
江原さんにはいろいろとお世話になった。ベルギーを訪れた時に宿泊したホテルでトラブルが発生し、フランス語で喧嘩は出来ず、江原さんにホテルに来てもらったこともある。

ある年の暮れ、いつものように年賀状を出した。あくる年の3月初めに「受取人死去のため返送」と公印が押され戻ってきた。それから、しばらくして朝日新聞の「惜別」の欄に「江原順氏客死」の記事が載った。
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2013.07.17 / Top↑
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