花の降る午後宮本輝の長編小説である。気だるい午後に花が降るような幸福が訪れる。

アメディオ・モジリアニが風景画を描いたような一枚の絵。主人公の甲斐典子は志摩半島のホテルに夫の病気の療養を兼ねて宿泊していた。ふらっとたちよった英虞湾沿いの喫茶店に絵が掛けられていた。

「喫茶店の主人に訊くと、ときおりこの近辺に写生旅行に来る青年に頼まれて場所を提供したのだが」・・・と、六号の風景画五点展示されていた。その中の「白い家」という題名の絵がなぜか典子に強く印象づけた。

典子はフランス料理店アヴィニオンを経営していた夫の死後その店の後を継いだ。絵はアヴィニオンの一階の漆喰の壁に掛けられた。

ある開店間際に絵の作者だと名乗る青年が訪れた。高見雅道という青年画家だ。そして夫が残したアヴィニオンの店を経営していく典子。典子と雅道を結びつけた「白い家」という一枚の絵をめぐって物語は展開していく。芸術とエロス、女性の自立、そして幸福についての物語である。


宮本輝の文学に登場する女性はいつも美しく魅力的な女性ばかりである。読者の多くはその女性の魅力に心を高ぶらせながら己の姿を観るかのように引き込まれて行くのだろうと思う。

宮本輝は「あとがき」で・・・「一所懸命に生きている人々が幸福にならなければ、この世の中で、小説などを読む値打ちは、きっとないでしょうから。」と1988年春と結んでいる。

私は数ある宮本文学の中でもこの「花の降る午後」という美しい題名にもとても心ひかれます。


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2011.03.27 / Top↑
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